シャコンヌを弾いてみる〜運指の検討など〜

昨年11月来,SeeSaaブログへの切り替えやら何やらで中断していた「シャコンヌを弾いてみる[1], [2], [3], [4]」を再開します。

少しでも演奏がラクになるよう,音階の同定をしていました。当然難しいスケールは取り出しての部分練習となりますが,どんな音階か分かって練習した方が仕上がりが速いからです。

という事で,スケール以外はほぼ無視でした。前回からの続きでは,怒涛のアルペジオに突入するわけですが,ギターと言う楽器はもともと,スケールよりもアルペジオが得意な楽器(音階が順に並んでいる鍵盤とは逆)ですので,アルペジオ部分はすっ飛ばすとすると,それ以降そんな難しいスケールは出てきません。殊に♯2つのニ長調になったところなどは,ほっとします(曲想的にもそんな感じです)。つくづくギターは♯系が得意な楽器だと痛感します。


速いスケールの同定を終えて,次は運指の検討に入りたいと思います。校訂者の運指を使うのも基本ですが,やはり自分に合うものを模索します。むろん場当たり的に弾きやすいものを探すよりも,付けた方のねらいも理解した上での総合的判断(当方のキライな言葉)という事になります。何と何を勘案してそうしたとでも言わない限り,「総合的判断」なるもの単なる独断と変わりませんので。むろん最終的には独断です。自身で演奏する以上,弾きやすさや好みで決めるのは当然のことですが,どこをどう考慮したかが重要です。


アルペジオ部分をあらためて取り上げれば,当方にとって弾きにくいところが,1,2ヶ所あります。
まず,ここ(譜例1. 第103, 104小節)です。第103小節の3拍目とつづく104小節の1拍目。
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譜例1. 第103小節の3拍目とつづく104小節の1拍目にmaの「股割り」が発生します(佐々木編)。
ヴァイオリンの原曲では全く大したところではないのですが,ギターでは弾きにくいアルペジオです。右指のmaが弦をまたいで連動します。むろん隣り合わせの弦なら何でもないわけですが,セゴビア編,阿部編,その他どのギター編曲でもこうなっています。4本弦を弓で弾くヴァイオリンに対して,6本弦を指で弾けるギターはアルペジオの自由度はずっと高いわけですが,一方弦長が長く4度調弦なため音域が飛ぶアルペジオはヴァイオリンよりも苦手です。ヴァイオリンでは①②弦のアルペジオで何でもありませんが,ギターでは①③弦と②弦をまたぐことになります。ここは,良く右手のフォームを検討して,②弦をまたいでmaで①③弦を弾く重音が自然になる様練習します。ここは純粋に技術練習で,楽器を持ってない時でも,ma連動の練習をします。むろんこれは人前ではできません(笑)。右手ができている人には何でもないかもしれませんが,当方の右手にはしっかりとその感触を覚えこませないといけません。

続く困難ポイントはここ(譜例2. 第103, 104小節)です。
最高音のB♭をオクターブ下げる編曲も見られますが,やはりここの跳躍はアルペジオ中のアクセントでしょうから,楽器が違うとはいえ,これを下げたのではツマラナイと言わざるを得ません。むろん佐々木先生もオリジナルに忠実な編曲ですが,弾きにくいです。
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譜例2. 第107小節の最高音の跳躍(佐々木編)。
あらためてここの原譜を見てみましょう。
ちなみに,バッハはここの一連のアルペジオのパターンをすべて書いてあるわけではありません。冒頭の小節でパターンを示した以降は一種のコード譜の様なもので音符で和音のカタマリが書いてあるだけで,それをアルペジオにバラして下さいというものです(譜例3,第89小節から)。その記譜で続く当該箇所(第107小節)は,譜例4です。佐々木先生はギター的に高いFを重音で追加されています(他のossiaも示されています)が,原譜どおりに,このFは省略させて頂きました。ここの左手の技術としては当方は斜めセーハで乗り切っています。
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譜例3.ヴァイオリン譜でのアルペジオ開始部分(89小節目から:ベーレンライター原典版)。

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譜例4.ヴァイオリン譜でのアルペジオ用の和音(107小節目:ベーレンライター原典版)。高音のB♭とDに加え矢印て示した延びている低音FとB♭の計4つの音でアルペジオを弾けば良いわけです。

[1]シャコンヌを弾いてみる
[2]シャコンヌを弾いてみる〜練習方針〜
[3]シャコンヌを弾いてみる〜音階の同定〜
[4]シャコンヌを弾いてみる〜音階の同定・つづき〜
注記:譜例2が間違っていましたので,入れ替えました。

この記事へのコメント

  • よしあきギャラリー

    私には理解できないのですが、家内は勉強になっているようです。
    ありがとうございます。
    2025年01月26日 05:58
  • Enrique

    よしあきギャラリーさん,

    奥様にもご覧いただいているとは!
    光栄です。
    予約投稿の記事を見直してみて,ミス箇所を修正しております。奥様にもお知らせ願えれば幸甚です。
    2025年01月26日 06:38
  • プー太の父

    すごい難解そうな音符ですね。
    素人にはチンプンカンプンです( ノД`)
    2025年01月26日 07:01
  • てんてん

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    2025年01月26日 20:27
  • Enrique

    プー太の父さん
    >
    >すごい難解そうな音符ですね。
    原譜は譜例4なのですが,アルペジオ(分散和音)にして楽譜に書くと難しそうな譜例1や2の様になってしまいますが,むしろクラシックギターの人は楽譜に書いてもらわないと弾けないのですね。
    2025年01月28日 16:42
  • Enrique

    てんてんさん

    「B!ブックマーク☆」をありがとうございます。
    2025年01月28日 16:43
  • Enrique

    ふるたによしひささん

    既読!ありがとうございます。
    2025年01月28日 16:43